ココット 開発秘話

いまやメンテナンス・オーバーホール向けの洗浄装置として、400台以上の納入実績を誇る「ココット」。しかし、そこにいたるまでの製品開発にはたくさんの挑戦やさまざまな方のご支援がありました。ココット誕生までの開発ストーリーをご紹介いたします。

①はじまりは粗悪なウェットブラストへの不満


レストアの例:シリンダーヘッド

2002年、あるバイク再生(レストア)業者の方からこんな問い合わせがありました。
「海外製のウェットブラスト装置は、価格が高く、納期も長い(3ヶ月)、また、アフターサービスがない。低価格の装置もあるが性能がまるで出ない。ウェットブラストをやっているマコーさんで、同等の機械を作ってもらえませんか」
この方は海外製のウェットブラスト装置をお持ちでしたが、多くの問題点を抱えており、他のウェットブラスト装置への買い替えを検討されるなかマコーに問い合わせされてきたのでした。

そもそもレストアとは、バイクや自動車の旧車を当時の状態に再生することで、ヨーロッパでは一般的に行われています。当時の部品は古くなっているため洗浄し、復元する必要があります。そのため、表面を傷つけずに洗浄でき、さらに光沢が出せるウェットブラストがレストアに最適ということらしいのです。

マコーは、企業向けにオーダーメイドの装置を製作するという業態であり、ウェットブラストというマイナーな技術を扱っていることから認知度向上に苦慮しておりました。どうやってウェットブラストの認知度を上げようかと悩んでいる中で、このレストア業界に向けた民生品の開発が舞い込んできたのです。いまさら民生品を・・・とも考えましたが、民生品を作るということは弊社のような小さなメーカーにとっては夢であり、このことも開発へ踏み切る後押しとなりました。

②従来のブラストとは全く異なるコンセプト

当時レストア業界では、ブラストというとサンドブラストでの処理が一般的で、ウェットブラストは非常にマイナーでした。また、既存のウェットブラスト装置は粗悪で、ウェットブラスト自体にマイナスの印象がありました。それを払拭すべく、既存のブラストとは全く違う新しい工法として印象付けるコンセプトを設けました。


「メディブライト」の意味

「メディブライト:メディア(研磨材)+ブライト(輝き)」と言う新しい処理として大々的にアピールすること、装置の形を従来の安っぽい手作りのようなデザインとは違った独自のデザインにすること、装置の名前もウェットブラストではなくわかりやすい名前にすることなど、既存のイメージを大きく変える装置として開発を始めたのです。

③地元の力で作り上げたグッドデザイン

全く新しいブラストの形


当初案~中間案~工業デザイナー黒崎氏による決定案

ココットの完成には、地元企業の協力なくしては成し得ないものでした。
初めは、社内で装置デザインを行ないましたが、出来てくるのは角型の見慣れた装置ばかりで、発想の限界を感じました。そこで、長岡造形大学で講師の経験のある工業デザイナーの黒崎英也氏を紹介いただきました。黒崎氏と打合せを何度も重ね、完成したデザインは丸くて愛嬌のある宇宙人のような形をしたものでした。

球体へのこだわり


ヘラ絞りによる球体ボディ

ボディを球体にすることで、従来の角型にはない様々な利点が生まれました。抱え込むような姿勢で作業するため疲れにくいこと、研磨材がカドに溜まらず装置は常にクリーンに保てること、何と言っても見た目のインパクトが抜群であるということ、ボディを球体にすることで、こんなにも特徴的な装置になるのかと目からウロコの思いでした。

ただし、設計担当は頭を抱えました。
「どうやってこの球体を作ったらいいのか?」
価格を抑えるため、型を作って・・・と言うような膨大なコストは掛けられません。かといって表面を削るウェットブラストですから、樹脂成型では持ちません。 いろいろ調べたところ、新潟県内のある絞り加工業者で直径800mmの半球形ヘラ絞りができるとのこと。早速装置の設計に取り入れ、上下に組み合わせることで球体ボディが実現できました。

逆転の発想が生んだ美しい筐体

球体のボディには更なる問題がありました。ヘラ絞りを行なうと、ヘラ痕と油汚れが残ります。この除去はサイズも大きいので非常に困難で手間も時間もかかります。しかしここは逆転の発想で、ウェットブラスト装置のボディ表面をウェットブラストすることを思いつきました。専用の装置を製作して、ボディの洗浄と表面仕上げを一括で行い、ウェットブラスト独特の光沢とヘラ目が美しい筐体が出来上がりました。

このように一筋縄ではいかなかったココットですが、完成後のお披露目で黒崎氏から「よくぞこのデザインを忠実に形にしていただいた」との言葉をいただき、とても嬉しく思いました。
ココットは、たくさんの地元企業の力を借りて完成し、2003年グッドデザイン賞を受賞しました。ココットは地元技術の集大成であると言っても過言ではありません。

④はじめての商品拡販に挑む


発売当初のココットのページ
ココットは弊社で初めての民生向け商品のため、装置の拡販も試行錯誤の繰り返しでした。まず手始めに考えたのは、従来とは異なる販売手法とPR方法でした

価格を抑えるためのHP直接販売

弊社は小さな会社で、全国を飛び回る専任の営業をつける余力はありません。また、販売価格を抑えるためには代理店も置きたくないため、装置はインターネット限定で販売することにしました。面と向かっての営業ができないため、ホームページでの情報発信や配布用の広報ツールの充実を行う必要がありました。 地元長岡のデザイン事務所にご協力いただいて、様々なツールを製作いたしました。その際に、消費者の購買に至るまでの心理状態に合わせたPRを行うことで、購買までの道筋をつけられるという「AIDMA理論」を教えていただき、これに基づいたパンフレットやポスターなどを製作しました。さらに、2輪・4輪のアフターメンテナンスを取り扱っている雑誌への広告掲載や、自動車のアフターマーケット向けの展示会や旧車ショーなどにも積極的に出展しました。

親しまれ、覚えやすいネーミング

装置を特徴づけ、他との差別化を図るために、ネーミングにもこだわりました。
社内からの公募により名称は「ココット」に決定しました。ココットが球体で卵をイメージさせることから思いついたとのことでした。ウェットブラストという難しいイメージを全く感じさせない名前と言うことで、ある女子社員のアイデアが採用され、めでたく金一封はその社員の手に渡りました。

キャラバンと鉄人28号


キャラバンの様子

鉄人28号撮影風景

広報活動の中でもとりわけ新たな試みとして行ったのは、2tトラックの荷台にココット、発電機、コンプレッサーを積み込んで出張デモをおこなう「キャラバンデモ」でした。

事前に、開催地周辺のショップにビラを配り、雑誌に開催の告知広告を掲載して、カー用品店やバイクショップはもとより、自動車のジャンク部品のフリーマーケット会場やサーキットの駐車場など様々な場所でデモンストレーションを行いました。中には1日で数人しか集まらず、ウェットブラストの認知度の無さを痛感したこともありました。また、真夏の炎天下の中開催したキャラバンでは、トラックの荷台のコンプレッサーが熱でオーバーヒートし使い物にならなかったこともありました。

また、大きなPR効果となった映画「鉄人28号」へのココットの出演も、幸運な偶然から起こったことでした。ある展示会に出展しココットを展示していた所、突然映画会社のスタッフから「この機械を、ある映画のセットとして使わせてもらえませんか?」と声をかけられました。なんでも、出展した展示会と併設で開催されていたロボット展に、映画のセットとして鉄人をメンテナンスするロボットに相応しい機械を探されていた所、たまたま弊社のブースにあるココットが目にとまり声をかけたとのことでした。スクリーンにはほんの数秒しか登場していませんが、いい話題づくりにもなり大きなPR効果をあげることができました。

⑤最後に

ココットを発売して14年、試行錯誤の積み重ねでしたが、おかげさまで400台を超える装置を納入することができました。これは、ひとえにココットの設計・製作に携わっていただいた地元の協力会社のみなさま、および、ココットをご購入いただいたみなさまのおかげであると感謝しております。
今後は、お使いいただいているお客様により一層のご満足いただくことを第一に、努めてまいります。