ウェットブラスト入門

このページではウェットブラストの要素や他工法との比較などを解説いたします。

●各要素の働き

ウェットブラストは、3つの要素 ・研磨材 ・液体 ・気体からなります。
ここでは各要素が起こす効果について解説いたします。

研磨材

主に加工(削る、叩く、研掃)をおこなう要素。

研掃効果

粒子で表面を擦り、
異物を除去します。

研削効果

表面を研磨材で削り取ります。

振動効果

固体粒子が衝突する
振動で付着物の浮き
上がりを促します。

ハンマーリング効果

表面の硬い膜に
多数のクラックを
発生させます。

ピーニング効果

表面に残留圧縮応力を残すことで、疲労寿命の延長を図ります。

梨地効果

表面に多数の凹凸を形成し、表面積の拡大や美装を行います。

液体

主に研磨材を運ぶ要素。

洗浄効果

研磨材および加工されたものが瞬時に洗い流されます。研磨材同士の衝突が生じにくく、打ち込みの発生が ありません。

冷却効果

研磨材と加工物の衝突によって生じる加工熱を瞬時に取り去ります。そのため、熱による変質がありません。

輸送媒体効果

液体を介して研磨材を扱うことで、研磨材の搬送が簡易になり、制御を精密におこなうことができます。

被膜効果

洗浄された表面を液体が覆うことで、油などの汚れの再付着を防止し、加工後の新生面が空気に触れることを防 ぎます。

環境

粉体の取り扱いに付きまとう粉塵を水が包み込み発生させません。

水としての効果

水自体が持つ溶解能力を利用して脱脂剤、防錆剤などを添加することで、複合効果が期待できます。

気体

主に研磨材、液体を加速させる要素。

固体、液体の加速

圧縮された気体が膨張することを利用して、固体、液体を高速に加速します。

膨張及びキャビテーションの発生

被加工物に当たった際にもまだ膨張が終了せず、気体が膨張を起こします。反作用としてキャビテーション(短時間での泡の発生と消滅)も起こ ります。

固体、液体の分散

気体の膨張を利用して、固体と液体を分散させ霧状にします。

●ウェットブラストと似た工法の違い

液体や粒子を吹き付ける技術はウェットブラスト以外にも様々な技術があります。
ウェットブラストと似た工法の特長や違いを解説いたします。

①ウォータージェット技術

水を高圧に圧縮して、細いノズルから高速に噴射して加工する技術です。 圧力は非常に高く(最高2000kg/cm2、200MPa)で噴射口から出た水は鉄のように固い棒状になります。 材料を切ったり、表面をはぎ取ったりするところに使います。ウェットブラストに比較して、水のみで加工することができ、後処理が楽ですが、 力が強すぎることと、大面積を加工することが不得意です。したがって用途が重なることはあまりありません。


②ドライブラスト技術

ウェットブラスト技術の液体を使わないもので、噴射は粒子のみで行います。歴史的にはこの技術のほうが古く、市場も100倍ほどの規模です。 様々なところで使われている実績がたくさんありますが、最近のニーズの中で作業環境をよくする(粉塵が出ない)や、非常に小さな粒子を使うこと、 同時に洗浄したいなどの要求のところではウェットブラスト技術に一長の有があります。


③スクラブジェット技術

ウェットブラストで圧縮空気を使わない技術です。ポンプの圧力で粒子と液体の混ざったスラリーをノズルから噴射して加工します。 技術的にはウェットブラストに比較してシンプルであり、ローコストになります。しかし噴射スピードが遅いために、小さな粒子を使った場合は力が弱くなってしまいます。

●主な処理目的

■WBP(ウェットブラスト・リン酸化成処理処理)

WBP = Wet Blast Phosphating System
ウェットブラストの後、連続してリン酸化成処理を行う、当社独自の表面処理システムです。 まず、金具表面に付着した油、サビ、異物などをウェットブラストにて除去し完全洗浄を行います。 洗浄された表面は活性化した状態で水膜で覆われ、そのままリン酸化成漕に入るため、接着力・防錆能力の高い精密リン酸皮膜が瞬時に表面に生成されます。 結果として、精密で緻密な皮膜を表面につくることができ、品質が安定します。 洗浄用の薬品や溶剤を使用しないため、ラインはショートランとなり工程も短縮できます。 また、ケミカルを使用しないと言うことは、モントリオール議定書や京都議定書により定められたオゾン層破壊物質が発生しないため、地球環境の保護に貢献できます。 現在、エンジンマウントとして使われる防振ゴム金具やブレーキ金具などの接着前処理として利用されています。

■WLS(ウェットブラスト・固体潤滑剤塗布一貫ラインの冷間鍛造前処理)

WLS = Wetblast Lubricant System
ウェットブラストの後、連続して潤滑剤塗布を行う当社独自の表面処理システムです。 鍛造前の金属表面には油や異物、酸化スケールなどが付着しており、その表面にウェットブラストを行うことで油や異物の洗浄や酸化スケールの除去を行います。 表面は完全洗浄され、かつ潤滑剤塗布に適した濡れ性の高い表面となり、そのまますぐに潤滑剤の塗布を行います。 その結果、工程は従来と比べ大幅に短縮され、スループットが短く高いスペース生産性を持つ連続ラインとなります。 また、脱脂~エッチング工程をウェットブラストに、リン酸塩~金属石鹸工程を固体潤滑剤塗布に置き換えることで、薬品の使用量・排水量を減らすことができ、 コストダウンと環境への配慮を同時に行うことができます。自動車の足まわり部品の冷間鍛造前処理などに利用されています。

■PFE処理

PFE = Physical Fine Etching
ケミカルを使用せずに、表面をナノレベルで微細加工できる当社独自の表面処理システムです。
数ミクロンの微粒子を投射できるというウェットブラストの特長と、処理幅全長にわたって均一にスラリー(研磨材と水の混合液)を投射できる特殊なガンを使用することで、 表面全面を均一、緻密に粗化することができます。粗化された表面は完全洗浄されることと、均一で微細な山谷となることで、メッキや接着に最適な表面となります。 スラリーは特殊なガンにより霧状となって投射される遊離砥粒加工のため、対象物に必要以上の圧力がかからず10μm程度の厚さのフィルムや箔なども破ることなく処理できます。 また、エア圧力や粒子サイズ、投射時間などの条件を制御することで、加工量をコントロールすることができるため、再現性にすぐれた安定した表面を作り出せます。 フィラー含有樹脂の加工金めっき前洗浄アンダーフィルの濡れ性改善などに利用されています。

■メディブライト処理

メディブライト = メディア+ブライト
金属の表面仕上げ工法の一つです。
ヘアラインや鏡面仕上げ、梨地仕上げなどの従来からある表面仕上げとは違った、当社独自の新しい表面仕上げ工法です。
微粒子を投射できるというウェットブラストの特長と、均一にスラリー(研磨材と水の混合液)を投射できる特殊なガンを使用することに加え、 使用する粒子の材質や形状、大きさなどの条件を組み合わせることで、鈍い光沢を持った仕上げ面から、ツヤのある半光沢を持つ面まで様々な表面を作ることができ ます。 鉄、銅、ステンレス、アルミなど全ての金属材料に対応し、複雑な形状のものでも処理が可能です。 また、仕上げと同時に油や異物などの洗浄、サビ取り、溶接の焼け取りなども行えます。
現在、デジタルカメラ等のデジタル機器の筐体やバイクや自動車のエンジンの仕上げ、建材の表面仕上げなどに利用されています。