ウェットブラストの進化の物語 第1話
著:代表取締役/松原幸人
皆さんこんにちは。
昨今のコロナ禍ですが、私こと松原は、日々、「社会の未来、会社の将来のために、今なにができるだろう?」と思いを巡らせております。私と同じように、思いを巡らせ、次の一手を考え実践されておられる経営者の方々も多いと存じます。
このような有事では特に、メディアやSNSを含めて実に多種多様な情報が提供されます。参考になるものもあれば、中にはそうでないものもあるでしょう。しかし、「こういうときほど様々な情報に振り回されるべきではない。」と考えます。
こんな時だからこそ、再度原点に戻り、自社の大切にしていることや強み、弱みを見直すいい機会と捉え、まずは弊社の過去から現在、そして未来を整理してみたいと考え、「ウェットブラストの進化の物語」としてまとめてみることにしました。
第1話として、「ウェットブラストの誕生」をお送りさせていただきます。
お時間のある時、ご一読いただければ幸いです。
ウェットブラストの誕生
ウェットブラストは、今から遡る事100年程前に欧州イギリスで生み出されたと言われています。
残念ながら、誰がどこで開発したのかの記録は残っていません。
時代は1920年代。
欧州では蒸気機関からガソリンエンジンへ移行した時代です。
当時は現代ほど量産化技術が発達していない為、航空機や自動車のエンジンはとても貴重でした。
そのため、機体や車両が使えなくなっても、エンジンを部品レベルまで分解してオーバーホールし、再利用していました。
しかし、長い時間の中で雨水や埃、油にさらされながら高温下で動いてきたこれらの部品は、錆びが発生していたり、カーボンや油が固着しています。
再利用のためには、それら異物の除去が必要でした。
主に用いられた手段は、ブラシやサンドペーパーによる手作業です。
しかし、入り組んだ複雑な形状や狭い隙間の奥の処理は、非常に手間と時間がかかるものでした。
また、他の除去手段として「サンドブラスト」による除去もありました。
しかし、これにはひとつ問題がありました。サンドブラスト処理前に、油を除去する「脱脂工程」が必要だったのです。
乾式環境下で処理しなければならないサンドブラストには、脱脂工程は必須です。
この脱脂工程が、ブラシによる手作業同様にとても手間の掛かる作業だったのです。
そこで、このサンドブラストによる処理の手間を解決し、何とか効率よく短時間に行えないかと考え出されたのが、サンドブラストに水を混ぜた「ウェットブラスト」でした。
従来工法であるサンドブラストでは、研磨材を空気圧で吹き付けるだけでした。
そこに水という新たな要素を加え、水の「溶解性」と、研磨材の「こすり取り効果」を同時に発揮することで、油が付いた状態の部品をそのまま処理しようとしたのです。
それは、「脱脂」と「除去」に工程が分かれていた従来処理の、画期的な技術改善でした。
そして、この新しい処理方法「ウェットブラスト」は、見事にその効果を発揮します。
非常に手間がかかっていた従来の脱脂工程を省くだけでなく、水というコントロール性の高い要素を取り入れたことで、複雑形状の隙間部分の処理でも飛躍的に効率を上げることができたのです。
その開発にはそれなりの苦労があったでしょうが、処理のすばらしさ、素早さを体現できた時のインパクトは、当時、相当なものであっただろうことが容易に想像できます。
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さて、第1話「ウェットブラストの誕生」、最後までお読みいただきありがとうございました。
第2話は「ウェットブラストの進化」として、生まれたばかりのニッチ技術が新しい主用途と巡り合い、大規模な製造工程に抜擢されるその道のりをご紹介します。
ウェットブラスト進化の物語 第2話「ウェットブラストの進化」はこちらから
https://www.macoho.co.jp/column/history/a21/