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コラム

ウェットブラストの進化の物語 第5話

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ウェットブラストの進化の物語 第5話

著:代表取締役/松原幸人

ゼロエミッション

今回は、ゼロエミッションとウェットブラストがテーマです。
ゼロエミッションとは、平たく言えば「廃棄物をゼロにする」というコンセプトです。

国連大学が1994年に提唱したもので、排出物を限りなくゼロに近づけながら、最大限の資源活用を図る経済・生産における理念です。
SDGsも提唱する「持続可能」な生産活動を目指す考え方ですが、この目標に対して、それまでのウェットブラスト処理にどんな問題があり、どう対応したか?を、お話しさせてください。

・・・

「鍛造部品のスケール除去をできないか?」

すでに防振ゴムで実績を持つ自動車部品関連企業から、ウェットブラストに対してそんな要求がなされました。

対象部品は、熱間鍛造品。
鍛造工法の一種である熱間鍛造は、鉄を熱した後に大きく変形させるもので、硬い材料を様々な形にするには非常に有効な手段でした。
しかし、鉄を加熱し冷却すると、必ず表面に硬い「酸化スケ-ル」が生成され、さらに、その除去工程が必須となります。

一般的には、この酸化スケール除去には加工力の高いショットブラストが用いられますが、ショットブラストを用いた除去には大きな問題がありました。
それは、投射される粒子が大きいために表面が粗くなりすぎ、製品の規格値を超えた不良品を多く出してしまうという点です。
上記の問題を解決する代替工法として、微細な研磨材が使用でき、ショットブラストに比べて大きく表面粗さを抑えられるウェットブラストに白羽の矢が立ちました。

また、お客様がウェットブラストを選んだ理由がもうひとつありました。
インライン化が可能な点です。

ショットブラストは、発生する粉塵のため作業環境が悪く、インライン化は無理だったのです。
スピーディーな大量生産の必要がある大手自動車部品製造において、インライン化によるジャストインシステムは至上命題でした。

ウェットブラストなら脱脂も不要、洗浄工程までを装置一台で賄え、さらに自動化できる。
インライン化による効率の良い生産が可能である点からも、ウェットブラストはうってつけと思われました。

しかし、ここで問題が発生します。
それは言い換えると、この工程を代替するにあたりクリアしなければならない条件であり、マコーに課せられた大きな課題でした。

それが、顧客が掲げたゼロエミッションです。

確かに、スケール除去はウェットブラストでできました。
ハードな酸化スケールの除去も過去に実績がありました。
しかし、その際使用していた研磨材「アルミナ」は、セラミック製で粉砕しやすい材料であり、ショットブラストを用いた場合に比べて大量の産業廃棄物を出してしまうことが判ったのです。

インライン化でき、既定の表面粗さで安定生産できながら、さらに、廃棄物を限りなくゼロに近づける。
この課題を解決しないかぎり、ウェットブラストによる代替は成り立たないし、装置化も「無い」。
私たちはそう感じました。

ウェットブラストの進化

第5話「ゼロエミッション」、最後までお読みいただきありがとうございました。
第6話は、第5話の後半となります。
ゼロエミッションという課題に対してマコーが出したひとつの「答え」をお送りします。

ウェットブラスト進化の物語 第6話「ステンレス研磨材」はこちらから
https://www.macoho.co.jp/column/history/a27/