ボルト表面のサビは締結トルクに影響するのか? -ウェットブラストによるサビ除去で実現する安定した締結品質-

カテゴリ
ウェットブラスト技術コラム  サビ取り 
タグ
ウェットブラスト  サビ  サビ取り  メンテナンス  処理事例  洗浄 
B!

「規定トルクで締め付けたはずなのに、軸力が安定しない。」

このような締結トラブルの原因の一つとして、ボルト表面のサビが挙げられます。
締結時に加えたトルクの大部分は摩擦として消費されるため、サビによって摩擦係数が変化すると、同じトルクで締め付けても得られる軸力が変わってしまいます。

本コラムでは、サビが締結品質に及ぼす影響を分かりやすく解説するとともに、ウェットブラストによるサビ除去が、摩擦係数の安定化や締結品質の向上にどのように役立つのかをご紹介します。

目次



1.ボルト表面のサビは締結トルクに影響するのか?

 
結論から言えば、ボルト表面のサビは、締結時の軸力や締結品質に大きな影響を与えます。

その理由は、ボルト締結時に加えたトルクの約80〜90%が、ねじ面や座面で発生する摩擦として消費されるためです。
一方、実際にボルトを引っ張り、部材を締め付ける軸力として利用されるのは約10〜20%程度といわれています。

そのため、ボルト表面にサビが発生すると摩擦係数が変化し、同じトルクで締め付けても得られる軸力が一定にならず、締結品質に影響を及ぼします。

具体的には、次の2つの問題が発生します。


1) 摩擦係数が増える ⇒ 軸力が不足する

ボルト表面にサビや酸化皮膜が発生すると、ねじ面や座面の摩擦係数が高くなります。
その結果、加えたトルクの多くがねじれ疲労の方向にエネルギーが消費され、ボルトを引っ張る軸力へ十分に変換されなくなります。

そのため、規定トルクで締め付けても必要な軸力が得られず、締結力が不足する可能性があります。


2) サビの状態が不均一 ⇒ 軸力がばらつく

サビは、全面に均一に発生するとは限りません。部分的な腐食や粉状のサビなど、表面状態が場所によって異なることで、摩擦係数にもばらつきが生じます。

その結果、同じトルク・同じ締付条件で作業しても、得られる軸力が毎回変化し、締結品質が安定しなくなります。

サビが締結品質に影響する仕組みを図で整理すると、次のようになります。


 

では、サビによって実際にどのような締結不具合が発生するのでしょうか。
代表的なトラブルを見ていきましょう。

サビによる締結不具合を見てみる


2.サビによる締結不具合の代表例

ボルト表面のサビを放置したまま締結すると、摩擦係数が変化・ばらつくことで、締結品質にさまざまな不具合を引き起こす可能性があります。
代表的な例は次の3つです。


1) 締付け不足(軸力不足)

ボルト表面にサビや酸化皮膜が発生すると、ねじ面や座面の摩擦係数が高くなります。
その結果、加えたトルクの多くがねじれ疲労の方向にエネルギーが消費され、ボルトを引っ張る軸力へ十分に変換されなくなります。

そのため、規定トルクで締め付けても必要な軸力が得られず、締結力が不足する可能性があります。


2) 過大な締付けによるボルト破損

サビは、全面に均一に発生するとは限りません。部分的な腐食や粉状のサビなど、表面状態が場所によって異なることで、摩擦係数にもばらつきが生じます。

その結果、同じトルク・同じ締付条件で作業しても、得られる軸力が毎回変化し、締結品質が安定しなくなります。

3) トルク管理が成立しない(品質保証が困難になる)

サビは、全面に均一に発生するとは限りません。部分的な腐食や粉状のサビなど、表面状態が場所によって異なることで、摩擦係数にもばらつきが生じます。

その結果、同じトルク・同じ締付条件で作業しても、得られる軸力が毎回変化し、締結品質が安定しなくなります。

これらの不具合を図で整理すると次のようになります。

 

 

では、これらの締結不具合を防ぐには、どのような表面処理が有効なのでしょうか。
ウェットブラストによるサビ除去が、締結品質の安定化にどのように貢献するのかをご紹介します。

ウェットブラストによる改善効果を見てみる


3.ウェットブラストによるサビ除去の価値「安定した摩擦係数」を作る

ウェットブラストは、サビ除去において次の4つのメリットを持ちます。


メリット1) 均一な表面仕上げで摩擦係数が安定する

ウェットブラストは、サビや酸化皮膜を均一に除去しながら、表面粗さを一定の範囲にコントロールできます。
その結果、摩擦係数が安定し、トルクから軸力への変換が再現性良く行われるようになります。

これにより、締付け品質の安定化や締結不良の低減が期待できます。


メリット2) 母材へのダメージを抑えながらサビを除去できる

ウェットブラストは、ワークの材質や目的に応じてさまざまな投射材を選択できるため、サビだけを効率よく除去しながら、母材の削り過ぎを抑えることができます。
そのため、ねじ山形状を維持しやすく、締結トラブルの低減にもつながります。


メリット3) ピーニング効果による疲労強度の向上が期待できる(条件による)

球状の投射材を使用した場合は、サビ除去と同時にピーニング効果が得られることがあります。
投射材の衝突によって表面に圧縮残留応力が付与されることで、疲労強度の向上が期待できます。

繰り返し荷重を受けるボルトでは、大きなメリットとなる場合があります。


メリット4) 粉塵の飛散を抑え、安全な作業環境を実現できる

ウェットブラストは、水と研磨材を混合して処理を行うため、乾式ブラストと比べて粉塵の飛散を大幅に抑制できます。
その結果、粉塵爆発リスクの低減や作業者の安全性向上につながるだけでなく、作業環境の改善にも貢献します。


ウェットブラストによるメリットを図で整理すると次のようになります。

 

ウェットブラストは、締結品質の安定化だけでなく、ボルトの洗浄・サビ除去作業の効率化にも貢献しています。
竹中工務店様での改善事例をご紹介します。

 

4.ウェットブラストによるサビ除去後の効果まとめ

ボルト表面のサビは、摩擦係数の変化を通じて軸力や締結品質にさまざまな影響を及ぼします。
一方、ウェットブラストでサビを適切に除去することで、摩擦特性の安定化や締結品質の向上が期待できます。

その違いをまとめると、以下のようになります。

項目 サビありボルト ウェットブラスト後
ねじ山の状態 腐食・損傷しやすい 形状を維持しやすい
摩擦係数 不均一・高い 安定・適正
軸力 不足・ばらつく 安定し、規定値に近づく
締結不良 発生しやすい 発生リスクを低減
トルク管理 再現性が低い 再現性が向上
ボルト破損(過大締付け) 発生リスクが高い 発生リスクを低減
 最後のまとめでは、ここまでご紹介した内容を踏まえ、最後にボルト表面のサビが締結品質へ与える影響と、ウェットブラストによる改善効果を改めて整理します。
 

5.まとめ

ボルト表面のサビは、摩擦係数を変化させることで、軸力や締結品質に大きな影響を与える要因です。規定トルクで締め付けても十分な軸力が得られなかったり、締結品質にばらつきが生じたりすることで、シール不良やボルト破損など、さまざまなトラブルにつながる可能性があります。

ウェットブラストによるサビ除去は、サビや酸化皮膜を均一に除去しながら、母材やねじ山へのダメージを抑え、摩擦係数を安定させることができます。その結果、トルクと軸力の関係が安定し、締結品質の向上や品質の再現性向上に貢献します。

マコーでは、ボルトやナットをはじめとする締結部品のサビ除去や表面処理に関するご相談を承っております。
ワークの材質やサビの状態、求められる締結品質に応じて、最適なウェットブラスト処理をご提案いたします。サビ除去や締結品質の安定化でお困りの際は、お気軽にご相談ください。


サビ除去や締結品質の安定化でお困りでは、ありませんか?


関連コラム

 

✎ 著者情報


  グローバルマーケティング部 佐田 俊彦 


今回のコラムに関連するご相談やさらに詳しい内容を知りたい方は、以下もぜひご覧ください。

まずは相談してみる 技術ライブラリへ 資料ダウンロード

関連記事

マコーのウェットショットピーニング【第4回】

ボンデのセッケン層を「選択的に剥がす」ウェットブラスト技術の挑戦 -CVJ外輪の塗装前処理を例に-

40L WBP装置の次の一手 「圧縮空気を使わない」という選択 ‐ なぜ今、脱エアなのか? コンプレッサーレス化で変わる防振ゴム金具前処理 ー