TECHNICAL FEATURE|PEENING
技術特集|ピーニング
部品の小型・軽量化と高耐久化を支える「ピーニング技術」。
本特集では、ショットピーニングの基礎から、ウェットショットピーニングの特長、処理技術、投射材まで順次ご紹介します。
第5回となる今回は、疲労強度向上と表面粗さの増加抑制の両立を目指して開発した新投射材「SUSTEAR🄬-P」について解説します。
第2回
ショットピーニングとウェットショットピーニングの違い
第3回
ウェットショットピーニングの効果
第4回
xEV時代の駆動部品を支えるピーニング技術
第5回
新投射材 SUSTEAR🄬-P
ショットピーニングは、ギヤなどの自動車用駆動部品において、疲労強度や耐久性を向上させる表面改質技術として広く利用されています。
一方で、従来のショットピーニングには課題もあります。それは、投射材の衝突によって部品の表面粗さが増加する場合があるという点です。
特にギヤ歯面では、表面粗さの増加が摩擦や動力伝達効率、NVH(騒音・振動・不快感)特性に影響する可能性があります。
要求される表面性状を満たすため、後工程での研磨が必要となる場合もあります。
近年、xEVの普及に伴い、駆動部品にはさらなる小型化・高耐久化に加え、電費向上や静粛性の確保が求められています。
KEY CHALLENGE
疲労強度の向上 × 表面粗さの増加抑制
圧縮残留応力を付与しながら、ギヤ歯面の表面性状を維持することが重要です。
こうした課題に対応するため、マコーが開発したのが、ウェットショットピーニング専用の新投射材
「SUSTEAR🄬-P」です。
これまでのピーニング特集はこちら
ショットピーニングの効果は、処理方式や投射条件だけでなく、使用する投射材によっても変化します。
同じピーニング処理であっても、投射材の粒径や質量、硬さなどの機械的性質によって、部品表面に与える作用は異なります。
これらの特性は、部品表面への圧縮残留応力の付与や表面粗さの変化に関係しています。
FACTOR 01
粒径・質量
投射材の大きさや質量は、衝突時の作用に影響します。
FACTOR 02
機械的性質
硬さなどの特性が、材料表面の塑性変形に関係します。
FACTOR 03
投射条件
投射速度や処理時間などによって処理結果が変化します。
そこでマコーが着目したのが、投射材そのものの機械的性質です。
新投射材「SUSTEAR🄬-P」は、ウェットショットピーニングにおいて、圧縮残留応力の付与と表面粗さの増加抑制を両立することを目指して開発されました。
図①|新投射材「SUSTEAR🄬-P」
SUSTEAR🄬-Pは、ウェットショットピーニングの「微細投射材+幅広ガン」という処理技術と組み合わせることで、駆動部品の表面処理における課題の改善を目指しています。
① 疲労強度向上と表面粗さの増加抑制
圧縮残留応力の付与によって疲労強度の向上を図りながら、表面粗さの増加を抑えることで、耐久性と表面性状の両立を目指します。
② 後工程の負担軽減
表面粗さの増加を抑制できれば、適用条件によっては歯研工程の省略や研磨量の削減につながる可能性があります。
③ 処理工程の生産性向上
微細投射材と幅広ガンによる処理技術を組み合わせることで、処理の効率化や工程全体の生産性向上への貢献が期待されます。
POINT
投射材の特性から、表面改質の可能性を広げる
SUSTEAR🄬-Pは、投射材そのものの機械的性質に着目し、疲労強度向上と表面粗さの増加抑制の両立を目指したウェットショットピーニング専用投射材です。
ギヤや駆動部品の高耐久化には、浸炭や窒化、DLCコーティングなど、さまざまな表面処理技術が活用されています。
各工法には異なる特長があり、求められる性能や処理条件によって適切な方法は異なります。
ウェットショットピーニングは、微小な投射材の衝突によって圧縮残留応力を付与し、疲労強度の向上を図る技術です。
以下に、主な表面処理工法の特徴を比較します。
表①|ギヤ・駆動部品の主な表面処理工法比較
| 項目 | 浸炭 | 窒化 | DLCコーティング | ウェットショットピーニング |
|---|---|---|---|---|
| 主な目的 | 表面硬度・耐摩耗性向上 | 表面硬度・耐摩耗性向上 | 超硬質による耐摩耗性・低摩擦 | 疲労強度・じん性向上 |
| 処理原理 | 高温でC拡散→表層硬化 | N拡散→硬い窒化物生成 | 表面に炭素系硬質薄膜形成 | 微小ショット衝突で残留圧縮応力導入 |
| 表面硬度 | ◎(高い) | 〇(やや高い) | ◎(非常に高い) | △(上昇効果は小さい) |
| 耐摩耗性 | ◎ | 〇~◎ | ◎(特に優秀) | △(単独では限定的) |
| 疲労強度 | 〇(場合により低下も) | 〇 | △(はく離リスクあり) | ◎(亀裂抑制に有効) |
| じん性維持 | △(硬化層脆化の懸念) | 〇 | △(割れ・はく離リスク) | ◎(母材じん性を損なわない) |
| 適用部品例 | ギヤ、シャフト、カム | ギヤ、バルブ部品 | ピストンピン、カム、摺動部品 | ギヤ、スプリング、シャフト |
| コスト | 〇 | 〇 | △(高い) | ◎(比較的低コスト) |
| 工程の難易度 | 熱処理炉必要 | 専用炉必要 | 真空成膜装置必要 | ウェットブラスト装置で実施可能 |
| 特徴的メリット | 高硬度で耐摩耗性大 | 低温処理・寸法変化小 | 低摩耗・超耐摩耗 | 疲労寿命延長・じん性確保 |
※各工法の特徴を整理した参考比較です。 実際の性能・コスト・適用条件は、 対象材料や処理条件によって異なります。
◎・〇・△は一般的な傾向を示すものであり、 すべての用途における優劣を保証するものではありません。
このように、ウェットショットピーニングは、疲労強度の向上を目的とした表面改質技術です。
マコーでは、さらに表面粗さの増加抑制にも着目し、ウェットショットピーニング専用投射材「SUSTEAR🄬-P」を開発しました。
xEV時代の駆動部品には、小型化・軽量化と高耐久化に加え、動力伝達効率やNVH特性への配慮が求められています。
こうした要求に対応するためには、圧縮残留応力の付与だけでなく、表面粗さの増加を抑制することが重要です。
次回は、SUSTEAR🄬-Pの具体的な評価結果に踏み込みます。圧縮残留応力、投射材の粒度、表面粗さの関係から、SUSTEAR🄬-Pの特長をさらに詳しくご紹介します。
TECHNICAL DOCUMENT
SUSTEAR🄬-Pについて、もっと詳しく知りたい方へ
新投射材「SUSTEAR🄬-P」の特長や適用可能性、具体的な処理条件などについて、詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。
TECHNICAL FEATURE|PEENING
ウェットショットピーニングをさらに詳しく知りたい方へ
微細投射材による表面改質や、ピーニングによる各種特性の改善について、関連する技術コラムでも詳しくご紹介しています。
ウェットショットピーニングについてもっと詳しく見る →TECHNICAL FEATURE|PEENING / NEXT
第6回
SUSTEAR🄬-Pが変えるピーニング
次回は、圧縮残留応力、投射材の粒度、表面粗さの関係から、SUSTEAR🄬-Pの特長を詳しく解説します。
ピーニング処理についてお困りではありませんか?
ワークの材質や形状、求める疲労強度、表面性状によって、最適な処理条件は異なります。
マコーでは、ウェットショットピーニングの処理検討やサンプルテストについてもご相談いただけます。
グローバルマーケティング部 橘 和寿
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