ショットピーニングとウェットショットピーニングの違いとは? - 同じ「ピーニング」でも、その特長は異なる -
TECHNICAL FEATURE|PEENING
技術特集|ピーニング
部品の小型・軽量化と高耐久化を支える「ピーニング技術」。
本特集では、ショットピーニングの基礎から、ウェットショットピーニングの特長、処理技術、投射材まで順次ご紹介します。
今回は、ショットピーニングとウェットショットピーニングの違いについて詳しくご紹介します。
第1回
なぜ今、ショットピーニングなのか?
第2回
ショットとウェットの違い
第3回
ウェットショットピーニングの効果 - 微細投射材を用いたピーニングによる部品の高耐久化 -
第4回
COMING SOON
1.はじめに
ショットピーニングは、材料表面に圧縮残留応力を付与し、疲労強度や耐久性の向上に貢献する表面改質技術であり、自動車、航空機、産業機械など幅広い分野で活用されています。
部品の小型・軽量化と高耐久化への要求が高まる中、ピーニング技術の重要性はさらに高まっています。
本コラムでは、一般的な「ショットピーニング」と、マコーが開発に取り組んできた「ウェットショットピーニング」にどのような違いがあるのか、それぞれの特長とともにご紹介します。
2.ショットピーニングとは?
ショットピーニングは、金属粒子やセラミックスなどの投射材を高速で衝突させることで、材料表面に圧縮残留応力を付与し、疲労強度を向上させる表面改質技術です。
1930年代に工業化されて以来、自動車部品や航空機部品をはじめ、さまざまな部品の疲労強度向上に利用されてきました。
投射材を金属表面に衝突させることで、表面に圧縮残留応力を付与します。
高い加工効果が得られる反面、投射材の衝突により処理表面が大きく粗化したり、処理面に粒子が残留したりする可能性があるなど、いくつかの課題もあります。
ショットピーニングの基礎を詳しく知りたい方へ
3.ウェットショットピーニングとは?
ウェットショットピーニングとは、 液体・投射材・圧縮空気を混合したスラリーを高速噴射し、材料表面に投射材を衝突させる表面改質技術です。
ショットピーニングによる疲労強度向上などの加工効果を活かしながら、 水による冷却効果や微細投射材の使用によって、 加工時の発熱や処理後の表面粗さを抑えた処理が可能です。
ギヤへのウェットショットピーニング処理
BASIC KNOWLEDGE
そもそも「ウェットブラスト」とは?
ウェットショットピーニングのベースとなる「ウェットブラスト」について、 基本原理や特長、一般的なブラストとの違いをわかりやすく解説しています。
ウェットブラストの基礎を見てみる →では、一般的なショットピーニングとウェットショットピーニングでは、 具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
次のセクションでは、両者についての違いを見ていきます。
4.ショットピーニングとウェットショットピーニングの違い
どちらも投射材を材料表面に衝突させ、圧縮残留応力を付与するピーニング技術ですが、投射方法や使用できる投射材などに違いがあります。
主な違いを比較すると、以下のようになります。
| 比較項目 | ショットピーニング | ウェットショットピーニング |
|---|---|---|
| 投射方法 | 投射材を圧縮空気や遠心力により高速で衝突させる | 液体・投射材・圧縮空気を混合したスラリーを噴射 |
| 加工時の発熱 | 粒子衝突や摩擦によって加工熱が発生 | 水による冷却効果によって発熱を抑制 |
| 処理範囲 | ノズル中心部ほど処理が強くなる傾向 | 幅広ガンにより広範囲を均一に処理可能 |
| 投射材 | 金属粒子やセラミックスなど | 数µmサイズの微細投射材も使用可能 |
| 狭小部への処理 | 形状によっては処理が難しい場合がある | 微細投射材により狭小部への適用が可能 |
| 表面粗さ | 処理によって表面が粗化する場合がある | 微細投射材によって粗化を抑制 |
特にウェットショットピーニングでは、水と微細投射材を活用できることが、処理特性の違いにつながっています。
5.ウェットショットピーニングの3つの特長
ウェットショットピーニングの特長は、大きく3つあります。
FEATURE 01
加工熱を抑制できる
従来のショットピーニングでは、粒子の衝突や摩擦によって加工熱が発生します。 これにより、圧縮残留応力の低下や熱変形のリスクが生じる場合があります。
ウェットショットピーニングでは、 水による冷却効果によってこうした影響を低減することができます。
水による冷却効果で、加工時の発熱を抑制します。
FEATURE 02
均一で高効率な処理ができる
従来ノズルでは、中心部ほど処理が強くなる傾向があります。
一方、マコー独自の「幅広ガン」はスリット状ノズルを採用しており、 広い範囲を均一な強度で処理することができます。
幅広ガンにより、広い範囲を均一に処理します。
FEATURE 03
微細投射材で狭小部にも処理できる
ウェットショットピーニングでは、 数µmサイズの微細投射材を利用できます。
そのため、薄板部品や小型部品はもちろん、 従来では処理が難しかった狭小部にピーニング処理を施すことができます。 また、微細投射材を用いることで、処理表面の粗化を抑制することもできます。
微細投射材により、狭小部の奥まで処理できます。
APPLICATION
xEV用ギヤへの適用
こうしたウェットショットピーニングの特長は、 電費向上を目的として小型化・小モジュール化が進むxEV用ギヤの 表面改質において、大きなメリットとなります。
xEV用ギヤに求められる性能
小型化・小モジュール化 × 高耐久化
6.微細投射材で得られるピーニング効果
マコーの評価試験では、ウェットショットピーニング処理の前後で、 次のような効果が確認されています。
疲労限度
約10%向上
破壊寿命
最大3倍
表面硬度
約300HV向上
摩耗量
約1/15に低減
疲労限度・破壊寿命・表面硬度・摩耗量など、 評価結果の詳細はコラムにて詳しくご紹介しています。
ピーニングコラム第4回で詳しい評価結果を見てみる →CASE STUDY
実際の導入事例をご紹介しています
7.まとめ
ショットピーニングとウェットショットピーニングは、いずれも材料表面に圧縮残留応力を付与するピーニング技術ですが、加工方法の違いによって、実用上の特性には違いがあります。
特にウェットショットピーニングには、以下のような特長があります。
- 加工時の発熱を抑制できる
- 均一で高効率な処理ができる
- 狭小部への適用と表面粗さの抑制が可能
部品の小型化・高性能化が進む中では、処理対象の形状や求める表面性状に合わせて、適切なピーニング方法を選択することが重要です。
TECHNICAL FEATURE|PEENING
本特集では、ピーニング技術をさらに深掘りします
今後の技術特集では、ウェットショットピーニングについて、以下のテーマを順次取り上げていきます。
- ウェットブラスト+幅広ガンによる高効率処理
- 微細・高硬度投射材による表面改質
- 新投射材「SUSTEAR®-P」
TECHNICAL FEATURE|PEENING / NEXT
第3回
ウェットショットピーニングの効果 - 微細投射材を用いたピーニングによる部品の高耐久化 -
次回は、ウェットショットピーニングの効果について詳しくご紹介します。
ピーニング処理についてお困りではありませんか?
ワークの材質や形状、求める疲労強度、表面性状によって、最適な処理条件は異なります。
マコーでは、ウェットショットピーニングの処理検討やサンプルテストについてもご相談いただけます。
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✎著者情報
グローバルマーケティング部 佐田 俊彦
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