弊社へのお問い合わせの多くは、お客様が抱える技術課題です。
ある素材に対して、粗化・除去は可能か?その実績は?装置提案をしてもらえないか、など。
日々、いただく多様な課題にお応えさせていただいていますが、技術課題のご相談の他にもうひとつ、よくご質問いただくことは、やはり「ウェットブラスト技術そのもの」に関してです。
ウェットブラストの原理は?仕組みは?特長は?
他の表面処理工法とどう違うのか?など。
様々な製造工程で使われるサンドブラスト、ショットブラストなどの乾式ブラストに比べて、湿式のウェットブラストに携わる企業は世界的に見てもかなり少なく、「そもそもニッチ」であることは否めません。
さらに、一般消費者の目に触れにくいBtoB商材であるケースが圧倒的に多く、加えて、ニッチでありながら重要な工程を担っている場合が多々存在し、お客様との秘密保持契約で技術が公開できない場合もしばしばあります。
つまり、発信される情報が極めて少ないのです。
そこで、当シリーズ「プロフェッショナルが解説するウェットブラスト」では、ウェットブラスト技術やその研究、試験、技術発信に長年携わった経験を活かし、現在、お客様の課題対応を最前線で支える営業技術部の佐田が、基礎や特長をあらためて解説したいと思います。
当技術の情報に関して、その収集しにくさに苦労されている企業様へ、当コラムがささやかな一助になれれば幸いです。
第一弾は、ウェットブラストの基礎①「圧縮空気・液体・研磨材について」。
まずは、ウェットブラストの基礎中の基礎、原理と構成要素を解説します。
圧縮空気は、ウェットブラストにおいてスラリー(水+研磨材)を加速するために必要となる「エネルギー」です。
気体は、その体積を縮めることができ、縮められた気体(圧縮空気)は元に戻ろうとする力(空気圧エネルギー)を蓄えています。そして、このエネルギーを得るために必要なのが、気体を圧縮する装置、コンプレッサーです。
つまりコンプレッサーは、ブラスト加工時の必須機器と言えます。
ウェットブラスト加工時における圧縮空気の役割は、主に以下の4つとなります。
<参考> コンプレッサーのおもな仕様
モータ出力 kW | 15 | 22 | 37 | 55 | 75 |
---|---|---|---|---|---|
吐出し空気量 m3/min | 2.3 | 3.7 | 6.1 | 9.0 | 12.3 |
元圧力 MPa | 0.69 |
ウェットブラスト用の水は、主に水道水・工業用水が使用されますが、ここで注意が必要なのは、その水に含まれる微細固形物です。
被加工面の品質、及び、使用する研磨材の形・大きさによっては、上記の問題により、フィルターの使用が必要となる場合もあります。また、品質のみでなく、装置機器への影響も無視できないケースがあります。
ウェットブラスト加工時における、液体の役割はおもに以下の6つです。
研磨材(メディア)は、大きく「多角形状粒子」と「球状粒子」に分けられます。
粒子の表面性状・組成・硬度・比重等により、被加工面への影響は変化します。しかし、基本的には表面を削る・叩くといったことが、研磨材の役割です。
ウェットブラストで使用される研磨材の、一般的な要求事項としては以下のようなものがあります。
研磨材の形状や材質、使用用途などをまとめたウェットブラスト入門「研磨材とは」についてはこちらから。
https://www.macoho.co.jp/wetblast/seminar/2-1.html
<参考> ウェットブラストで用いられるメディアの一般的な選択範囲
材質 | 比重 | 新モース | 形状 | 粒子径範囲 | |
---|---|---|---|---|---|
セラミックス | アルミナ系 | 3.93 | 12 | 多角形状 球状 |
3~600μm |
ジルコニア系 | 3.85 | 9 | |||
炭化ケイ素系 | 3.22 | 13 | |||
ガラス | ホウ酸系 | 2.5 | 6.5 | 球状 | 5~400μm |
ソーダ系 | 2.5 | 6.5 | |||
樹脂 | ナイロン系 | 多角形状 球状 |
80~800μm | ||
フェノール系 | 1.3 | 4.0 | |||
メラミン系 | 1.5 | 4.0 | |||
金属 | SUS系 | 7.8 | 多角形状 球状 カットワイヤー |
100~300μm |
ウェットブラストで使用可能な研磨材を一覧にしてまとめた「研磨材について」の記事はこちらから。
https://www.macoho.co.jp/wetblast/abrasive.html
著者:営業部/営業技術課/佐田
技術や基礎知識に関するお問い合わせへのご回答、トライアル受付などのインサイドセールスを担当しております。
ウェットブラストに長年携わった経験を活かし、当技術の専門家としてお客様の多様な課題に対応させていただきます。ぜひ、お気軽にご相談ください。