金属製品や部品の寿命を縮める大きな要因のひとつが「サビ」です。
一度発生したサビは進行しやすく、見た目の劣化だけでなく、強度低下や機能不良を引き起こすこともあります。
そこで今回は、代表的なサビ取り方法を比較しながら、「ウェットブラスト工法」の特長をご紹介します。
サビとは、金属が酸素や水分と反応して酸化する現象(腐食)のことです。
特に鉄の場合、空気中の水分と酸素により「酸化鉄」が形成され、赤褐色のサビとして現れます。
主なサビの種類は次の通りです。
| 種類 | 説明 |
| 赤サビ(Fe₂O₃) | 最も一般的な鉄の酸化物。進行すると素材が脆くなる。 |
| 黒サビ(Fe₃O₄) | 比較的安定した酸化膜。高温下や薬品反応で形成されることが多い。 |
| 白サビ | 亜鉛めっき上に発生する水酸化亜鉛。主に湿気による表面腐食。 |
| 緑サビ | 銅・真鍮などに発生する酸化銅(緑青)。外観に影響するが、腐食は比較的遅い。 |
ウェットブラストは、水と混ぜた投射材(スラリー)を圧縮空気や機械的な羽根車の遠心力を用いて高速に投射し、被加工材表面に衝突させることでサビや酸化皮膜を除去する工法です。
乾式ブラストに対して次の特長があります。
衝突後にスラリーの飛沫は、凝縮して水滴となるため大気中で沈下しやすく、粉塵爆発の懸念回避や衛生的な作業環境を保つことができます。
作業者の安全性や周辺設備への影響も大幅に改善されます。
投射材が水と混合した状態で投射されるため、乾式に比して空気抵抗による速度エネルギーの損失が少なく、微細投射材であっても被加工材に衝突させることができます。
球形の微細投射材を用いた場合、被加工材表面は凹凸が小さく滑らかな仕上がりとすることができます。(一方、多角形投射材を用いた際に得られる微細な凹凸は、後工程の塗装や接着、コーティングの密着性向上に効果的です)
また、投射材が水に運搬されることによって、単位時間あたりに作用する投射材を乾式に対して多くできるため、短時間での処理効果が得られます。
サビが除去された被加工材表面は、直ちにスラリーに覆われます。
水膜を介して表面に投射材や除去された物質が載りますが、これらはシャワー水洗で容易に洗い流すことができます。
被加工材に油脂が付着している場合はスラリーに脱脂剤を、錆が生じやすい素材の場合は防錆剤をそれぞれ投入することで、洗浄効果を補助することも可能です。
薬品を使用しないため環境負荷が低く、水の再利用も可能です。
「安全・清潔・エコロジー」を実現できる工法として注目されています。
サビ取りには多様な方法がありますが、複雑形状にも柔軟に対応でき、短時間で美しく仕上げるという観点では、ウェットブラストが最もバランスの取れた工法と考えております。
薬品を使わず、粉塵等も発生しない、環境にも配慮しながら確実なサビ取りを実現できる。
これからの時代に求められるサビ取りの最適解――それがウェットブラストです。
以上
グローバルマーケティング部 佐田 俊彦