金属部品の機械加工後や樹脂成形品には、その精度にもよるが微細なバリ等が発生し、製品の機能低下や外観不良の要因となる場合がある。現在、多くの工程では手作業によるバリ取り・仕上げが実施されており、作業者負担の増大や品質のばらつきが課題となっている。
本提案では、ウェットブラスト技術を用いた微細バリ除去プロセスを適用し、手作業工程の削減と品質の安定化を図ることを目的とする。
ウェットブラストは、投射材(以下、メディア)と水を混合したスラリーを圧縮空気や機械的な羽根車の遠心力を用いて高速に投射し、被加工材表面に衝突させることでブラスト効果を得る技術である。本技術は一般的な乾式ブラストに対して投射材の選択幅が広く、投射材や処理方法の選択により、ブラスト加工の結果生じる凹凸をできるだけ抑えつつ、微細なバリを除去することが可能である。
また物理的な工法ゆえ、金属・樹脂を問わずにバリ除去が可能である。
対象材質やバリの状態に応じて、以下のようなメディアを選定する。
| 対象 | バリの状態 | 推奨メディア | 特徴 |
| 金属 | 薄バリや毛バリを含む比較的軽微なバリ | 軟質樹脂系メディア | 表面粗さや見た目を変化させずに、ダメージレスでバリ除去可能 |
| バリは非常に微細だが、粘りが強く且つバリ量は多め | 微粒セラミックメディア | 微粒メディアの研削効果でバリを除去。 但し、表面の色見た目は若干変化する。 |
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| 樹脂 | 縁部にごく薄いバリ(薄膜状の余肉)の残存 | 軟質樹脂系メディア | 被加工材のダメージの有無は、選択するメディアとの硬度差に依る |
樹脂材のバリ取りでは、「静電気」と「熱」が大きな課題となる場合がある。
乾式ブラストではメディア衝突時の摩擦による静電気が発生しやすく、粒子や除去したバリが部品表面に付着して除去が困難になることがある。
また、摩擦熱により部品表面が変質するリスクもある。
一方、ウェットブラストは水を媒体としているため、静電気や熱の発生が抑制される。
また衝突後のスラリーの飛沫は凝縮して水滴となるため大気中で沈下しやすく、粉塵爆発の懸念回避や衛生的な作業環境を保つことができる。
またスラリー中に脱脂剤を混入することで前工程での脱脂洗浄が不要であること、金属製品に対しては、防錆剤を混入することで防錆効果も同時に付与可能である。
つまり、
といった特長があり、特に自動化による品質の安定化や歩留まり向上の点で高い優位性を発揮できる。
ウェットブラストによる微細バリ除去技術は、金属・樹脂の双方に対応可能なダメージレス・静電気レス仕上げプロセスである。
高精度な仕上げ品質と自動化適応性を両立し、次世代のバリ取り・表面処理技術として多くの産業分野での応用が期待できる。
以上
グローバルマーケティング部 佐田 俊彦