冷間鍛造における潤滑前処理は、非化成潤滑剤の普及によりその重要性が大きく変化しており、前処理条件は潤滑皮膜の残存性や焼付き抑制に影響し、加工安定性を左右する要因です。
本コラムでは、ウェットブラスト前処理に着目し、非化成潤滑剤時代に求められる前処理の役割について解説します。
これらの工程は、潤滑工程を安定させるための下準備として重要である一方、加工結果への影響は相対的に小さいと考えられてきました。その背景には、従来主流であった化成処理の存在があります。
化成処理では、素材と化学反応することで、
という特性がありました。そのため、素材表面の状態が加工品質に及ぼす影響は限定的とされてきました。
しかし近年、環境負荷低減の観点から環境対応型潤滑剤(非化成潤滑剤)の適用が進むにつれ、前処理の位置づけは大きく変わりつつあります。
非化成潤滑剤は、素材表面に塗布・乾燥することで潤滑皮膜を形成しますが、以下のような課題が存在しています。
このため現在では、
として、改めて注目されるようになっています。
名古屋工業大学と当社による共同研究において、前処理条件の違いが潤滑皮膜の残存性に大きく影響することが明らかになりました。前処理は単なる下準備ではなく、成形中の潤滑状態そのものを左右する要因となります。
前処理によって素材表層に加工硬化層が形成されると、成形中に以下のような現象が確認されました。
以下は、円筒試験片圧縮前後の自由表面近傍の表面SEM観察画像及び断面観察画像です。球形粒子を用いた場合、圧縮された表層が鱗状に剥離している様子や断面観察では、表面近傍の結晶粒が扁平につぶれている様子が確認できます。
一方で、前処理による表層の硬化が比較的穏やかな場合には、ボール通し試験(穴や流路に規定径のボールを通し、内部状態および潤滑剤性能を簡易的に評価する試験方法)を行った結果以下が確認されました。
ウェットブラストによる前処理では、ショットブラストと比較すると以下の特長があります。