ウェットブラストは、水と投射材を組み合わせてワークの表面を処理する加工技術です。
バリ取りや洗浄、表面粗化、ピーニングなど、さまざまな用途に活用されています。
その中で、加工結果を左右する重要な要素の一つが「投射材(メディア)」です。
投射材は、材質や硬さ、粒径、形状などによって特性が異なり、同じウェットブラストでも、選ぶ投射材によって加工の強さや仕上がりは変わります。
では、どのような投射材があり、どのように使い分ければよいのでしょうか。
本コラムでは、ウェットブラストに使用される代表的な投射材の種類と特長、それぞれの主な用途を紹介しながら、目的に応じた投射材選定の基本について解説します。
ウェットブラストにおいて、仕上がり品質を決定づける最重要要素は「投射材(メディア)」です。
水・エア・投射材の3要素で構成されるこの工法の中でも、どの投射材を選ぶかによって、加工結果は大きく変わります。
まず全体像として、どのような種類の投射材があるのか、そしてそれぞれがどのような目的・場面で使われるのかを整理していきます。
ウェットブラストについて詳しく知りたい方へ
ウェットブラスト用の投射材は、材質や形状、硬さなどによってさまざまな種類があります。
ここでは、代表的な投射材を大きく4つに分類して紹介します。
多角形形状のアルミナ粒子
材質:アルミナ、セラミックス、炭化ケイ素
特長:硬く、角のある形状によって高い加工力を発揮
主な用途:表面粗化(密着性向上)、研削加工、比較的強力な洗浄
多角形の粒子は、粒子の角がワーク表面に作用することで、切削・研削に近い加工を行います。
特に硬質なアルミナなどは、バリ取りや表面粗化など、比較的高い加工力が求められる処理に使用されます。
球形のガラスビーズ
材質:ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ
特長:比較的ダメージが小さく、均一な仕上がりが得やすい
主な用途:美装仕上げ、軽洗浄、ピーニング(圧縮残留応力付与)
球状の粒子は、多角形粒子のように角で削るのではなく、ワーク表面に衝突することで「叩く」作用を与えます。
そのため、表面を整えたり、ピーニングによって表面に圧縮残留応力を付与したりする用途に用いられます。
プラスチック・種子系の投射材
材質:プラスチック:メラミン、フェノール、ナイロンなど/種子:クルミ、アプリコットなど
特長:比較的柔らかく、ワークへのダメージを抑えやすい
主な用途:バリ取り(デフラッシュ)、塗膜・薄膜剥離、金型などの各種洗浄
比較的柔らかい粒子を使用することで、被加工面へのダメージを抑えながら、表面に付着した不要物を除去できます。
特に、ワーク自体を傷つけたくない場合や、樹脂部品などのデリケートな製品に適しています。
金属系(ステンレス)の投射材
材質:ステンレスなど
特長:高比重で、衝突時に大きなエネルギーを発揮
主な用途:デスケール、強力洗浄、削り込み、強いバリ取り
金属系の粒子は、一般的な非金属系粒子と比較して比重が大きく、同じ速度で投射した場合でも大きな運動エネルギーを持ちます。そのため、高い処理能力が求められる強力な洗浄やバリ取りなどに使用されます。
ウェットブラストでは、目的に応じてさまざまな投射材が使用されます。
それぞれの投射材には、材質や粒径、硬さなどによって異なる特性があります。
マコーでは、さまざまな用途に対応した研磨材をご用意しています。
研磨材の特性や詳細については、以下をご覧ください。
ここまで見てきたように、投射材にはさまざまな材質や形状があり、それぞれ得意とする加工が異なります。
では、こうした違いはどのように生まれるのでしょうか。
次のセクションでは、投射材の加工特性を理解するうえで重要な「硬さ」と「形状」について見ていきます。
投射材を選ぶときは、「どれを使うか」だけでなく、どのような加工をしたいのかを考えることが重要です。 その加工特性を大きく左右するのが、投射材の「硬さ」と「形状」です。
上の図で示すように、硬く角のある多角形粒子は、表面に作用する際に削る力が働きやすく、 表面粗化や加工力が必要な処理に適しています。
一方、比較的柔らかく丸みを帯びた粒子は、表面へのダメージを抑えながら、 仕上げや洗浄などに用いられます。
投射材の特性を考える基本的な組み合わせ
硬い × 多角形 → 削る・加工する・粗化する
比較的柔らかい × 球状 → 整える・洗浄する・仕上げる
また、投射材を選定する際には、硬さや形状だけでなく、粒径や比重も重要な要素となります。
これらの違いによって、粒子がワークに衝突したときの作用や加工の細かさが変わります。
粒子の質量は、同じ密度の粒子で比較すると粒径の3乗に比例します。
そのため、粒径の違いは投射時のエネルギーにも大きく影響します。
ただし、実際の加工結果は、投射速度や投射量、液体との混合比、ワークの材質など、 さまざまな条件によって変化します。
投射材の「硬さ」や「形状」によって、削る・整えるなどの作用が変わることが分かりました。
では、実際の加工では、これらの特性をどのように組み合わせて投射材を選べばよいのでしょうか。
次に、具体的な加工目的ごとに、投射材の選び方を見ていきます。
実務で重要なのは、「どの投射材か」ではなく、何を実現したいかです。
以下は、目的に応じた投射材選定の一例です。
| 目的 | 推奨投射材 |
|---|---|
| 異種材料の密着性向上 | アルミナ(多角形) |
| 外観改善(仕上げ・美装) | 球形投射材(ガラス・ジルコニアなど) |
| ダメージが小さいバリ取り | プラスチック(多角形・球形) |
| 強力な加工(強いバリ取り・削り込み) | ステンレス(多角形) |
このように、投射材は「何を処理するか」だけでなく、 「どのような状態にしたいか」という目的から選ぶことが重要です。
ただし、実際の加工では、ワークの材質や形状、投射条件などによって最適な投射材は変わります。
投射材の特性だけでなく、実際の処理条件まで含めて選定することが、 安定した加工品質につながります。
このように、投射材は加工の目的に応じて選定することが重要です。
しかし、実際の加工では、選んだ投射材をそのまま使い続ければよいというわけではありません。
使用する中で投射材の状態が変化したり、粒度分布や液体との相性が加工品質に影響したりすることもあります。
最後のセクションでは、投射材を実際に使用するうえで知っておきたいポイントを見ていきます。
投射材は使用することで、摩耗や破砕が進みます。 その結果、粒径や形状が変化し、徐々に加工力や処理状態も変化していきます。
新品時と同じ性能が、使用中も維持されるわけではありません。
投射材は、すべての粒子が同じ大きさではなく、一定の粒度分布を持っています。
粒径のばらつきが大きい場合や、想定以上に大きな粒子が混入している場合には、 加工面に傷や表面欠陥を生じさせる可能性があります。
ウェットブラストでは、投射材だけでなく、水などの液体と一緒に使用するため、 水質や混入する薬品などが加工状態に影響する場合があります。
そのため、投射材単体の特性だけでなく、使用する液体との相性も考慮することが重要です。
今回は、ウェットブラスト用投射材の種類と、それぞれの特性や用途について見てきました。
投射材は、材質・硬さ・形状・粒径・比重などによってワークへの作用が変わります。
そのため、「どの投射材を使うか」ではなく、「どのような加工を実現したいか」という目的から選定することが重要です。
投射材の特性を理解することが、目的に合った投射材選定の第一歩となります。
実際の加工に適した投射材を知りたい方へ
ワークの材質や形状、求める仕上がりによって、適した投射材は異なります。
マコーでは、投射材の選定やサンプルテストについてもご相談いただけます。
グローバルマーケティング部 佐田 俊彦