自動車部品の製造工程では、「塗装密着性」「工程の効率」の両立が重要なテーマになっています。例えばCVJ(等速ジョイント)外輪のような冷間鍛造と機械加工によって製造される部品では、冷間鍛造前に形成される潤滑被膜(ボンデ膜)の存在が後工程へ大きく影響します。
本コラムでは、CVJ外輪向けの導入事例をもとに、「ボンデ膜のセッケン層だけを剥がす」ブラスト制御技術について解説します。
まずはCVJ外輪がどのような工程で製造され、その中でウェットブラストがどの役割を担っているのか見てみましょう。
CVJ(Constant Velocity Joint:等速ジョイント)は、自動車の駆動力をタイヤへ伝達する重要部品です。
高い耐久性・耐摩耗性・防錆性が求められるため、複数の塑性加工と機械加工、それに伴う表面処理を組み合わせて製造されます。
工程例としては以下の通りです。
この中で、ウェットブラストは図中⑦に示す通り、酸化スケール除去/セッケン層剥離工程で使用されています。
ボンデ処理後に残るセッケン層は、後工程にどのような影響を与えるのでしょうか。
次のセクションでは、塗装工程や熱処理工程の観点から、セッケン層を除去すべき理由について解説します。
冷間鍛造では、金型との摩擦を低減するため、潤滑被膜が必要になります。
そこで一般的に行われるのが、「リン酸塩皮膜」「金属セッケン層」からなるボンデ処理です。
ボンデ処理によって塑性加工性は向上しますが、一方で後工程では課題にもなります。
冷間鍛造後のワーク表面には、潤滑成分であるセッケン層が残留しています。
この状態のまま塗装へ進むと、塗装密着不良(塗膜剥離)の原因や熱処理に進むと炉内汚染の原因になります。
そのため、適切な前処理(セッケン層除去)が必要になります。
セッケン層を除去するだけなら簡単です。
しかし、防錆性能を維持しながら除去するには高度な処理制御が求められます。
ここで重要なのが、単純にボンデ膜を全面除去するわけではない、という点です。
これらの部品では「セッケン層だけを除去し、リン酸塩皮膜を残す」という非常に繊細な処理が理想的です。
高い防錆性能を有するリン酸塩皮膜を活かすためです。
つまりウェットブラストには、
CVJ外輪をはじめとする自動車の重要部品では、表面傷や打痕も重要な品質管理項目です。
本事例では、ワークをローラーで回転させながら1個ごと処理する方式を採用しています。
これにより、「ワーク同士が接触しない」「打痕レス処理」「安定した全面処理」を実現しています。
外観品質と機能品質を両立する上で重要なポイントです。
本設備では、ロボットによるワーク投入/排出を採用しています。
これにより、「タクト安定化」「品質ばらつき低減」「人手不足対応」「省人化」にも貢献しています。
ウェットブラストは、単体加工技術ではなく、自動ライン化しやすい工程技術としても導入が進んでいます。
「ウェットブラストでセッケン層だけ剥がせないか?」というニーズから本制御技術の検討が始まりました。
将来的な「薬液工程短縮」や「環境負荷低減」に向け、引き続き、物理的なウェットブラストの処理技術/制御技術向上に向けてお客様と共に取り組んでまいります。
今回ご紹介した選択的剥離技術以外にも、ウェットブラストはさまざまな工程課題の解決に活用されています。
CVJ外輪の製造工程において、ボンデ処理は冷間鍛造に欠かせない潤滑被膜ですが、その後工程では塗装密着性や熱処理品質に影響を与える要因にもなります。
本事例では、ウェットブラストの処理条件を最適化することで、セッケン層の除去とリン酸塩皮膜の維持という相反する要求に挑戦しました。また、ワーク同士が接触しない打痕レス処理やロボットによる自動化を組み合わせることで、品質と生産性の両立も実現しています。
ウェットブラストは単なる洗浄や除去のための技術ではなく、表面機能をコントロールするための加工技術として活用の幅が広がっています。
今後もマコーは、お客様の課題解決に向けて、ウェットブラストの処理技術・制御技術のさらなる向上に取り組んでまいります。
塗装密着性向上やセッケン層除去など、表面処理に関する課題がございましたらお気軽にご相談ください。