1. TOP
  2. コラム
  3. その他
  4. ちょっと難しい?フラットパネルディスプレイの種類あれこれ

コラム

ちょっと難しい?フラットパネルディスプレイの種類あれこれ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ちょっと難しい?フラットパネルディスプレイの種類あれこれ

フラットパネルディスプレイ(以下FPD)とは、液晶ディスプレイ・有機ELディスプレイ・プラズマディスプレイなどを指します。
筐体が板状で、画面が平面になっているディスプレイ機器の総称です。
昔の箱型で丸みを帯びた画面のCRT(所謂ブラウン管)の対義語として作られました。

コロナ禍となって1年弱経過しましたが、外出を控える半面、FPDを用いたテレビやスマホ・タブレットを使う時間が多くなった方も多いのではないでしょうか?
昨今の在宅勤務推奨やオンライン教育拡充、巣ごもり生活などでテレビ販売も好調な為、液晶ディスプレイのパネル価格は2~6割上昇しているそうです。

そんな、日常生活に欠くことの出来ないFPD。
今日はちょっとウェットブラストから寄り道して、業界に長年携わった私の経験から、少し技術的・専門的に「フラットパネルディスプレイ」をご紹介します。

 




フラットパネルディスプレイの種類

 

液晶ディスプレイ

ちょっと難しい?フラットパネルディスプレイの種類あれこれ

現在FPDの主流となっているのが液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display(以下LCD)です。

現在のLCDの多くはTFT(Thin Film Transistor)LCDで、ガラス基板上に薄い膜状の微細なトランジスタを規則正しく並べたものです。このトランジスタで、画素の点灯・消灯を行います。

4Kテレビの場合はトランジスタ回路の線幅は数μmと非常に微細です。
現在のテレビやスマホ・タブレットで用いられるディスプレイは、このTFT LCDが圧倒的に多い状況です。
さらに、TFT LCDの中でも方式は色々とあるのですが、現在の主流は下記の2方式となります。



IPS方式

見る角度によって色味やコントラストが変化しにくいのが特徴です。

視野角が上下左右約180度と、ほぼ真横や真上・真下からでも正しく見ることができます。
リビングなど、広い空間で大勢で観る場合におすすめです。



VA方式

前述のIPS方式と比較すると、黒色が強くコントラストがはっきりとしています。よって、クッキリとした綺麗な映像を楽しむ事ができます。

ただし一方で、視野角は狭いとされています。
(最近では、カタログ値はIPS方式とほぼ同等のようですが…。) 

家電量販店でも、よく見ると「IPS方式」「VA方式」と表記している場合がありますので、購入を検討の際に覚えておくと便利です。ちなみに、執筆者はIPS信者のためIPS方式を購入しています。ただし、同じメーカーでもIPS方式の方が若干価格が高いことが多いです。


上述の通り、現在のFPDの主流はLCDです。
しかし、LCDは自発光ではなく、バックライトが常時点灯している状態です。その前面で、表示する画素の色を変える構造です。
そのため、黒を表示するときには前面の構造物でバックライトの光を遮断しており、コントラストの強い黒(自然な黒)が出せないという欠点があります。
また応答速度が遅く、動きの早い映像だとぼやけるという欠点も(テレビ番組のエンディングで動くスタッフロールが「ぼやけて見える」など)。主流とはいえ、求めるところによっては万能ではないということです。

そこで登場するのが、近年よく見聞きする「有機ELディスプレイ」です。
上記LCDの弱点を克服し、様々な長所を有するディスプレイです。

 

有機ELディスプレイ

ちょっと難しい?フラットパネルディスプレイの種類あれこれ

有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescent Display(以下OLED)はLCDと異なり、有機ELそのものが自ら発光します。
そのため、LCDが弱点としていた自然な黒色の表現が可能であり、応答速度も早いのが特徴です。さらに、視認性も広いという長所も。 

ただし、自発光であるが故に、同じ自発光のプラズマディスプレイ同様画面の焼き付け問題の懸念があります。

今は制御側で焼き付け防止システムを搭載しているそうなのでそんなに心配しなくても良いとのことですが、長い目で見た時大丈夫なのか?と、個人的には少し心配です。(執筆者の実家の現役プラズマテレビは、祖父母が大相撲ばかり見ていたので某国営放送のロゴが画面右上に焼き付いて消えません)

さらに、OLEDは加工・製造の難しさから、低コスト化や大画面化に問題がありました。

OLED自体は2000年代初頭から製造されていましたが、上記の問題から、すぐにLCDに取って代わることはありませんでした。
最近は、韓国を中心に製造技術が格段に上がってきており、テレビ・スマホ・タブレットのハイエンド品をメインにどんどん採用が進んできていますが、それでもまだ価格は高めなようですね…。

ちなみに、日本人が大好きな某リンゴのロゴのスマホも、現在のハイエンド品はLCDではなくOLEDが採用されています。
これは全て韓国製となりますが、今後は中国製も採用される見込みのようです。
さらに付け加えると、昨今は日本の家電メーカーでOLEDの大型テレビが販売されていますが、実はこのOLEDパネル自体は全て韓国製となります。

ついでに、もうひとつ豆知識。
テレビ用のOLEDパネルとスマホ用OLEDパネルは、同じ「有機EL」といっても、実は方式が異なります。

テレビ用の場合は、OLEDで白色を発光して前面で他の色に変換しており、LCDに似た方式です。
一方、スマホ用のOLEDは1画素内に赤・緑・青それぞれ発光するようにしており、こちらの方は「より高精細」となります。
そしてこのスマホ用OLED、製造技術がより難しいという特徴も。
テレビのような大判サイズの量産には、今しばらく時間が掛かりそうです。


まとめ

ちょっと難しい?フラットパネルディスプレイの種類あれこれ

ということで、今回はLCDとOLEDについて、ちょっと専門的に紹介してみました。

LCDに関して言うと、製造技術は成熟しきっている感があります。
厳しい目で見れば短所はありますが、価格は手ごろ。特長をご理解いただければ、問題なく様々な用途に導入いただけると思います。

対してOLEDは、LCDの弱点を克服し、さまざまな長所を有します。しかしやはり、まだまだ高額であることが一番のネックでしょう。

OLEDは、まだまだ製造技術に伸び代がある印象です(印刷方式や、フレキシブル化など)。
今後の技術開発により、もっと安価になっていくと思われます。
今現在、テレビやスマホの買い替えをご検討の方は、参考にしていただければ幸いです。


関連ページ>透明度を保ちつつ表面を粗化するガラス・レンズ粗化処理とは
https://www.macoho.co.jp/application/glass-roughening.html



著者:営業部/営業技術課/遠藤

主に、ガラス・CFRP・電子部品業界を担当させていただいています、マコー技術営業です。
ディスプレイ業職に長年従事した経験を活かし、ガラス関連へのウェットブラスト応用や設備導入についての説明をさせていただく機会が多いです。
もちろん、ガラス以外の業界へのご説明も喜んで!業種の枠を超えた事例応用が様々に可能な点も、ウェットブラスト技術の魅力の一つと考えます。